第四章   いますぐ「温める生活」に切り換えよう!その1
          
--- 身体は温めれば温めるほど丈夫になる ---

   

 ここまでの章で「冷え」が万病の原因になっていることが、おわかりいただけたことと思います。
 では実際に身体を温めるにはどうすればいいのでしょうか。
 臨床経験からも身体を温めるには、次の方法がとくに有効です。


① 入浴及び温泉浴 ② サウナ浴 ③ 運動、労働
④ 日光浴 ⑤ マッサージ、指圧 ⑥ カラオケ
⑦ 大いに笑うこと ⑧ 飲酒(日本酒、紹興酒などの熱かん
      (
焼酎のお湯割り、ワイン
⑨ 身体を温める食べ物
⑩ 断食 ⑪ 生姜湿布、だいこん湯、ビワ葉温灸、
   梅醤番茶(ばいしょうばんちゃ)

 これから順番にやり方、その効果を説明しましょう。

  
  ① 入浴(風呂)で温める

 入浴して身体が温まってくると、全身の毛穴、汗腺が開き、身体内の老廃物が排泄されます。 血液やリンパ液の流れがよくなり、新しい酸素や栄養が、皮膚、筋肉、内臓の諸臓器にもいきわたります。 その結果、筋肉のこり、神経痛、関節の痛みも和らぎ、また、消化器官、泌尿器、生殖器、内分泌器官の機能が促進されます。
 また、神経細胞は鎮まり、リラックスして睡眠もよく深く取れるようになります。

 41~43℃までの湯に入るのが適切ですが、これ以上熱いと血圧が上昇し、心臓・循環器系に問題がある人は、心臓麻痺や脳卒中を起こすことがあるので要注意です。 とくに飲酒後は注意を要します。

(入浴の効能)
皮脂腺、汗腺などの分泌線の汚れをとり、老廃物の排泄を促す。
身体を温め、血行を良くして、皮膚、筋肉のみならず内臓諸器官の代謝をよくする。
浮力が心身をリラックスさせる。
水圧で筋肉をほぐし、とくに痛みに奏功する。
 
(入浴前の注意)
心臓から遠い 足→腰→腹→肩→胸 の順に、5杯ないし10杯のかぶり湯をしてから浴槽に入ること。
こうすると、血行が促進され、入浴の効果がさらに倍加する。
 
(入浴中の注意)
体温が36.5℃であることを基準に
 (1) 37~39℃(ぬるめの湯)・・・・・喘息、高血圧、不眠症、ストレス解消に
このぬるめの湯に長時間入ることにより、心身の緊張が取れ、鎮静効果が出てきます。
また、血管も緩やかに拡張し、血行がよくなります。
 (2) 40~42℃(ややあつめの湯)・・・・神経痛、筋肉疲労、二日酔い、寝起きが悪い、ジンマシンなどに
ややあつめの湯は新陳代謝を急速によくし、栄養補給と老廃物の排泄を強力に行ってくれます。
 
(入浴後の注意)
 下半身(できれば全身)に、冷たい水またはシャワーをかけて上がると、体表が冷えることにより、逆に体内が温まり、保温効果がさらに強まります。 できれば、入浴(温)→冷水浴またはシャワー(冷)を数回繰り返し、最後は冷水で終わるともっと効果が上がります。
 
さらに身体を温めるのに効果的な入浴法には、次のようなものがあります。
 
【1】 ミカン風呂
生のミカンの皮3~4個分を、ガーゼまたは布の袋に入れて浴槽内に入れます。 陰干ししたミカンの皮なら2~3個分をそのまま浮かせてもよいでしょう。 ミカンの皮のビタミン、ミネラル、精油などが身体を温め、皮膚を若々しくします。
 
【2】 ショウブ湯・モモの葉湯、ユズ湯、ヨモギ湯
初夏のころには、根のついたままのショウブ3株くらいを束にして、湯が沸く前から浴槽に入れておきます。
これには強壮効果があります。
夏は、モモの葉を入れた湯に入ると、アセモ、湿疹など皮膚病にいいでしょう。
冬は、ユズを入れた風呂に入ると身体が温まり、冷え性の人や風邪の予防にいいでしょう。
また、ヨモギや松葉を干して袋に入れたものを浴槽に浮かべて入ると、血行をよくし、冷え性を改善します。
 
【3】 塩風呂
食塩(Nacl)は、塩素とナトリウムから人工的に作られた不健康きわまるものですが、自然塩はまさに生命のエッセンスであるといっても過言ではありません。
「海」は「産み」からきているとされていますが、地球上の原始生命は、海の中で水とミネラル(鉄、カルシウム、ヨードなど)から生まれてきました。
母胎内の用水の成分と海水の成分は酷似し、また、これは血液の成分とも似ています。 私たちが死ねば、火葬され灰と骨になりますが、この灰と骨こそミネラルなのです。 よって、ミネラルのことを別名「灰分(かいぶん)」ともいいます。
つまり、私たちの身体の中の一番のエッセンスになっている物質が鉄、カルシウム、亜鉛、銅、ヨード、カリウム、マグネシウム、コバルト、ニッケルなど約100種類のミネラルであり、この100種類のミネラルから出来ているのが海の塩なのです。 この自然塩は、肌に塗ることにより、発汗作用や保温効果を発揮し、水や脂肪の排泄、美肌づくりに大いに役立つのです。
塩風呂の入り方

① 自然塩1袋(約500g)を浴槽の中にいれ、よくかき混ぜる。
   これに入ると、身体がポカポカと温まり汗が滴り落ちてきます。

② 上がるときは、シャワーで身体に冷水をかける。
   これは塩を落とす意味と、身体を引き締まる効果があるからです。 
   冷水をかけると、全身の毛穴、汗腺も閉じ、体表の血管も収縮するので熱が体内にこもり、保温効果が増します。
   ①②を数回繰り返すと、さらに効果があります。
   (ただし、心臓病や高血圧の方はやらないほうがいいでしょう)
 
【3】 塩もみマッサージ
1回、普通に浴槽に入ってから、洗い場で自然塩を手にまぶし、マッサージします。

① おなかの脂肪をとるマッサージ
   両手に塩をつけ、お腹の脂肪を両手でつまみ、外に向かって搾り出すようにして数回マッサージする。

② 手足のマッサージ
   手は手先より肩に向かって、足は足先より上に向かってこすりあげる。

③ その後、浴槽に入り、冷水のシャワーをかけて終わる。

④ これを2~3回繰り返すと、さらに効果がある。

 いずれにしても、このような入浴や次項のサウナ浴に際して一番大切なことは、「何分入る」とか「何回入る」などという目標は設けずに、「気分が良い」ということを基準に、入浴時間、入浴回数、入浴温度を決めることが大切です。

 (2) サウナ浴で温める

 サウナ浴には次のような効能があります。

毛穴が開いて新陳代謝が活発になり、体表及び内臓の血液循環もよくなり、食欲増進など内蔵機能が促進される。
筋肉こり、痛みに効く(ひえを改善するため)。
皮膚を鍛え、身体を温めるので、風の予防になる。
甲状腺の働きが良くなる。
 その結果、目が輝き、皮膚が湿潤し、全体的に若返ることにつながります。
 
(サウナ浴の入り方)
1回のサウナ浴は5分から10分の間が適当ですが、汗が流れるほど出たら、やせ我慢をせずに、み九表の時間にならなくても外に出て、冷水浴をしたほうがいいでしょう。
1回目にでる汗は、脂分と塩分が混じった濃い汗ですが、冷水浴後に再びサウナに入ったときに出る2回目以降の汗は薄くなります。 なめても真水のようなサラサラした汗になったら、皮膚近くの老廃物が出きったと考えてもいいでしょう。

 (3) 全身をすみやかに温める運動の方法

 
運動は持てる体力の60%くらいの力でやることが健康につながるということをスポーツ生理学が明らかにしています。
 身体を温めるための運動は、散歩、テニス、水泳、ジョギングなどどんなものでもいいのですが、運動直後または運動時の1分間の脈拍数が「160から自分の年齢を引いた数」(たとえば40歳の人なら120)になるようにすると、持てる力の60%の力で運動していることになります。
 一般によくやる運動は、isotonic(アイソトニック等張性)運動といい、筋肉の緊張度を変えないで、筋肉に繊維の伸長、収縮をさせる運動です。 ジョギング、ウエイト・トレーニング、テニスなど、ほとんどの運動がこれに入ります。

 一方、筋肉の繊維の長さを変えないでやる運動があります。 これを、isometric(アイソメトリック等尺性)運動といい、一定の姿勢で筋肉に力を入れて数秒間動かないでいるという方法です。
 運動する時間や、場所がない場合でも、いつでもやれて、しかも筋肉には十分な刺激になるということで、血行がよくなり、体温も上昇して「冷え」の対策にうってつけです。 欧米ではたいへんポピュラーな運動です。

室内で簡単にできる効果の高い運動
 運動をするには、上半身からはじめ、次第に下半身に移っていくほうが、血液の循環もよくなり、運動後の疲れも少なく効果的です。
 
(運動の種類)
一般のラジオ体操
 
腕立て伏せ→腹筋運動→スクワット
まず、腕立て伏せです。
 一度に連続してできる回数を5回とすると、その5回一区切りを1セットといい、3回行います。
 少し休んで、腹筋運動(足首を固定しての腹筋運動はむずかしい面もあるので、仰向けに寝て両下肢を上げたり下げ たりする運動で十分です)を、一度に10~20回を1セットにして、やはり3セット行います。
 少し休んで、最後にスクワットを一度に10~20回を1セットにして、3セット行います。

 これを毎日続けると、かなりの運動量になります。 繰り返しになりますが、あくまでも無理のない範囲から始めることが大切です。
 
アイソメトリック運動
次のような六つの基本のやり方があります。

1.手を胸の前でかぎ形に組み、力を入れて左右に引く (7秒間)
2.手をかぎ形に組んだまま後頭部に回し、左右に引く  (7秒間)
  (首、背筋、腹部の筋肉を引き締める効果もある)
3.両手を後頭部に組み、腹部に力を入れる (7秒間)
  (腹部の脂肪をとり、ウエストを引き締まる効果もある)
4.両手を後頭部に組んだまま両下肢に力を入れる (7秒間)
5.両手を後頭部に組んだまましゃがみ、臀部(でんぶ)から下肢に力を入れる (7秒間)
6.直立した状態でつま先立ちする (7秒間)
  (腹部や下肢、とくに下肢の筋肉を引き締める効果もある)

  

 それぞれ自分の持てる力の60~70%で約7秒間力を入れるのがポイントです。 一見すると楽な運動のようですが、これを行うことで血行が良くなり、体温も上がります。 また、呼吸量も多くなり、発汗、排尿力が増してきます。

 (4) 日光浴で温める

 
前章で述べたように、すべての生命は太陽のエネルギーから作り出されたものです。 日光の健康に寄与する力は計り知れません。 日光は皮膚の血行を良くして新陳代謝を促し、耐熱の産生を促進します。 また、汗腺、皮脂腺からの老廃物の排泄も促してくれます。 したがって、適度な日光浴は「冷え」対策に効果的です。

【日光浴1日目】
5分間身体の前面をさらし、
5分間身体の背面をさらす。
 
【2日目以降】
一日1分ずつ増やしていく。
最長でも身体の前面30分、背面30分を限度とする。
 
 もっとも理想的に日光を浴びる時間は、前・背面ともに8~10分ずつでしょう。
 ただし、日光浴で身体が衰弱する感じならやめること。 「快い」疲労感くらいなら続けてもかまいません。

・・・・という説明で、一昔前までは済んだのですが、今は日光の紫外線と皮膚がんの関係が問題視されています。

 冷蔵庫やエアコン、スプレーに使われていたフロンガスが地球のオゾン層を墓石、紫外線を浴びる量が増えるため、皮膚がんが増えているというのです。
 しかし、熱帯アフリカやアジアの原住民に皮膚がんが多いという報告がないことをみると、高脂肪分を摂る欧米人が紫外線にさらされると皮膚がんになりやすいと結論づけてもいいようです。 ただし、過度の日焼けは避けたほうがいいでしょう。

 (5) マッサージ、指圧、シャワーの刺激による温め効果

 マッサージで皮膚を刺激すると、体表に欝帯(うつたい)した血流の流れがよくなり、二次的に内臓の血行も良くなります。
 また、東洋医学的なツボを指圧することにより、内臓諸器官の機能を重点的に促進させることもできます。

 ツボというと難しく聞こえますが、押してみて痛いところ、ただし痛くても押すことで気持ちいいと感じるところがツボと考えていいでしょう。 こりや痛みの部分を親指の腹や人差し指、中指、薬指の腹で、2~3秒押してパット離すという自己流指圧をすることで、劇的に症状が改善することがあるので試してみるといいでしょう。

 なお、シャワーは患部を温める以外にマッサージ効果もあります。 とくに「温→冷→温→冷・・・・の順でシャワー浴をすると、体表の血管の拡張/収縮運動を助け、心臓の負担を軽くするほかに、皮膚へきている神経の強化にもつながり、中枢神経系にも好影響を及ぼします。 また、普通うに入浴をしたあとでシャワー浴をすると、シャワー浴効果を倍加してくれます。

 (6) カラオケ効果を活用する

 警視庁の調査によると、1960年に約1万2700人いた泥酔保護者は増加の一途をたどり、76年には約3万5000人になってしまいました。 しかし、カラオケの登場(76年)、レーザーカラオケの出現(82年)、カラオケボックスの本格化(88年)と、カラオケが盛んになるにつれて、その数もどんどん減り、93年には約1万3000人にまで減少しました。
 警視庁でも「意外な結果だが発散場所としてカラオケが泥酔者を減らす手助けになっている」と分析しています。

 歌を歌うと、大きく息を吸うため腹部に力が入り、自然と複式呼吸になります。 すると、胃腸、肝臓などの内臓諸器官は横隔膜などによりマッサージを受けることになり、血行がよくなって、その働きが促進されます。 また、大胸筋はじめ、呼吸に関する筋肉が働くことにより発熱を促進。 また、歌うことそのものが精神の緊張を暖めて血行をよくします。
 それぞれが、相乗効果をもたらして体熱を上げ、さまざまな病気を治す原動力になります。

 (7) 大いに笑うと、ここまで温まる!

 心から大声で笑うと、気持ちがリラックスして脳内の神経細胞よりβーエンドロフィンという物質が分泌され、気分がとても良くなります。
 気分がよくなると血行もよくなり、体温が上昇して、自然治癒能力が促進されます。
 末期がんの疼痛(とうつう)軽減のために寄席(よせ)療法がなされているというのも一理あると思われます。
 喜劇を見る、落語を聞く、野球の応援を必死でやるなどすると、がん細胞を食い殺してくれる「NK細胞」の活性が増すことが実験で証明されています。

 ある会社の社長は、65歳の大変元気な方です。
 毎日の宴席で酒量も多く、健啖家(けんたんか)ですので、過食気味で太っています。
 先日、人間ドックで検査をし、結果を見せていただき驚きました。
 コレステロール、脂肪は正常値で、それも低いほうのレベル、飲酒と比例して上昇する肝機能のγーGTPもまったく正常、その他すべていうことなしの百点満点の検査結果なのです。

 この社長は、頭脳明晰(ずのうめいせき)で人柄がよく、いつもたくさんの方々に囲まれています。 その方たちと朝な夕なに宴会をやり、機知とユーモアに富んだシャレとダジャレで一座を笑いの渦に巻き込んでしまいます。
 そしてご本人も、大声で「ワーッハッハーッ」と笑われます。 もちろん、身体は陽性の権化(ごんげ)のようで、頭髪は薄く、身体は温かいのです。
 この高体温が、心身の健康の源泉であることは間違いありません。


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